近年は地震や台風による自然災害が多く発生しています。
記憶に新しいところでは、2011年の東日本大震災や、2016年の熊本地震で甚大な被害が発生しました。
この時、多くの事業所で家具や棚の転倒、落下による被害が出ています。
東京消防庁が実施した調査によれば、近年発生した地震被害で負傷者の3から5割の方が屋内における家具類の転倒・落下・移動によって負傷しています。
平成28年(2016年)熊本地震に伴う室内被害の実態調査結果
自然災害はいつ起こるか分かりません。
自分のところは大丈夫、と油断していませんか。
いざというときに備えて、スチール棚を設置するときは、転倒防止や落下防止対策を同時にしておくことが大切です。
そこで今回は、スチール棚の転倒防止対策や落下防止対策についてご紹介したいと思います。
Contents
棚の転倒防止対策
まずは、スチール棚の転倒防止対策についてご紹介します。
スチール棚の転倒防止対策は、棚の種類や設置場所の状況によっていくつかの方法があります。
支柱と床をアンカーボルトで固定する
最もシンプルな方法は、支柱と床をアンカーボルトで固定する方法です。
支柱の足元に床固定用の転倒防止部材を取り付けることで、支柱と床をアンカーボルトで固定することができます。
床面と支柱がボルトでしっかり固定されることで転倒のリスクが大幅に低減されます。
床固定用の転倒防止部材を使用する方法は、コンクリート製の床でアンカーボルトを使用できる場合や、壁面や天井にスチール棚を固定できない場合などに有効な転倒防止対策です。
一方で、床にアンカーボルトが打てない場合や、コンクリート以外の床は強度が不足するためこの方法での転倒防止対策はできません。
また、床下に空間があるOAフロアでは、コンクリートの底床に打ち付けられる長さのアンカーボルトを使用する必要があります。
施工事例
中量棚(金網付)を現地組立させていただきました@東京都新宿区
中量ラック(側面パネル付)を現地組立させていただきました@板橋区-休日
支柱に前面転倒防止用のベースをつける
支柱に行うもう一つの転倒防止対策として、支柱の足元に転倒防止ベースを取り付ける方法があります。
転倒防止ベースは、スチール棚が前面に倒れないようにするための転倒防止用パーツです。
壁面を背にした状態で前面の支柱2本に転倒防止ベースを取り付けることで、前面に倒れにくくなります。
壁面固定用の転倒防止部材と併用して転倒防止ベースと取り付けると、より転倒のリスクが低減できます。
床にアンカーボルトが打てない場合には、この転倒防止ベースを使った方法がおススメです。
棚と壁面を固定する
支柱を固定する以外にも、壁面を固定する転倒防止策があります。
壁面用のL型固定金具を使って支柱と壁面を固定する方法です。
L型固定金具の一辺をスチール棚本体に固定し、もう一辺を壁面にボルトなどを使って固定します。
床面を固定できない場合におススメの方法です。
転倒のリスクをより低く抑えたい場合は、床固定用の転倒防止部材と併用して取り付けます。
※壁面転倒防止部材の選び方
壁面素材と転倒防止部材の組み合わせ例(L型固定金具を使用する場合)
壁面素材 |
転倒防止部材 |
コンクリート |
アンカーボルト |
石膏ボード |
トメラー、トグラーなど(石膏ボード用アンカー) |
木材 |
木ねじ |
壁面用のL型固定金具を使って壁面を固定する場合、固定する壁面の素材によって、使用する部材が変わります。
誤った組み合わせを使用すると、転倒防止の効果がなくなってしまう可能性もあります。
設置や取り付け方法が分からない場合は、ぜひミクニヤに相談ください。
ご依頼頂ければ出張での現場対応も可能です。
施工事例
軽中量ボルトレス棚を現地組立させていただきました[壁面固定工事付]@神奈川県横浜市
【別注仕様】軽中量ボルト式ラックを現地組立させていただきました@東京都大田区
棚と棚のあいだを天継する
床や壁に部材で穴をあけることができない場合は、棚と棚のあいだを天継(てんつぎ)する方法があります。
天継(てんつぎ)とは、棚と棚を向かい合わせで設置して、上部を天継材で固定する方法です。
天継(てんつぎ)をすることで、2つの棚が一体の構造になります。
天継材でつなげることで揺れに対して棚同士が支え合ことになり、床面や側面を固定しなくても転倒しにくくなります。
また、天継(てんつぎ)は最上部を天継材で固定するだけなので、棚と棚のあいだに通路スペースを確保することができます。
効率的にスペースを使用する方法としても有効な転倒防止対策です。
施工事例
中量棚、中軽量棚を現地組立させていただきました【天継工事】@茨城県つくば市
収納物の落下防止対策
転倒防止対策と合わせて収納物の落下防止対策もご紹介します。
落下防止対策は、主にスチールラックの棚に落下防止材を取り付ける方法があります。
落下防止バーをつける
スチール棚の収納物の落下を防止するために落下防止バーをつけます。
支柱の両端に専用の金具を設置して棒状の落下防止バーを引っかけて固定します。
落下防止バーの上部は金具に引っかけているだけなので、簡単に外すことができます。
収納物の出し入れが多い場合は、この落下防止バーが便利です。
施工事例
中量棚(金網付)を現地組立させていただきました@東京都新宿区
【別注仕様】軽中量ボルト式ラックを現地組立させていただきました@東京都大田区
落下防止パネルをつける
収納物の高さがある場合は、落下防止パネルを取り付けます。
落下防止パネルの基本構造は落下防止バーと同じです。
支柱の両端に専用の金具を設置し、落下防止パネルの側面から出ている棒に引っかけて固定します。
収納物を抑える面に金属のパネルを使用しているため、より多くの面で収納物の落下を防ぐことができます。
また、落下防止パネルはボルトで固定せず、側面から出ている棒に金具を引っかけて固定する構造になっているので、収納物を出し入れするときは簡単に外すことができます。
まとめ
業務用のスチール棚は丈夫で耐久性のある棚ですが、転倒や落下に対しては対策をしておかないと、思わぬ事故が発生してしまうことがあります。
特に最近では、地震や台風といった自然災害による影響も大きくなってきています。
地震や台風などの自然災害から被害を最小限に食い止めるためにも、スチール棚を設置するときは、同時に転倒防止対策や、落下防止対策をしておくことが大切です。
スチール棚の転倒防止対策は、支柱と床をアンカーボルトで固定する方法のほかにも、壁面を固定する方法や、棚と棚のあいだを天継材で固定する方法があります。
また、固定する床や壁面の素材によっても使用する部材は異なります。
誤った組み合わせを使用すると、転倒防止の効果がなくなる可能性もありますので、設置や取り付け方法が分からない場合は、ぜひミクニヤに相談ください。
ご依頼頂ければ出張で現場対応も可能です。