倉庫のレイアウトはなぜ重要?
倉庫のレイアウトは、倉庫運営の効率性と安全性に大きな影響を及ぼします。
適切なレイアウトを設計することで作業の動線が最適化され、在庫管理や商品の搬入・搬出など、倉庫全体の運営を円滑に進めることができます。
倉庫のレイアウトを適正化する具体的なメリットは、主につぎの3つがあげられます。
作業効率が向上する
倉庫のレイアウトを適正化することで、ピッキングや梱包などの作業を効率的に行うことができるようになります。
例えば、頻繁に出荷される商品は入口近くに配置し、あまり出荷されない商品は奥に配置するといった工夫をすることで、ピッキング時間を最小限に抑えることができるほか、棚の配置を工夫することで在庫管理がしやすくなります。
また、作業エリアと荷受けエリアなどを適切に分離することで、作業の滞りを防ぐこともできるので、出荷作業がスムーズになります。
安全性が向上する
加えて、倉庫のレイアウトの適正化は、作業者の安全性の向上にも大きく影響します。
棚の高さや通路の幅を適切に設定することで、作業員の動線が確保されて安全に作業ができるようになるほか、フォークリフトなどの運搬機器を使用する倉庫では、それらの導線を考慮することで、荷物の落下などの事故リスクの低減にもつながります。
また、倉庫内の動線を考慮したレイアウトにすることで、緊急時の避難経路を確保することができます。
迅速な避難が可能な動線を設計し、非常口や避難階段への誘導も明確にすれば、火災や地震などの緊急事態に備えることができます。
コスト削減につながる
さらには、倉庫のレイアウトを最適化することで、さまざまなコスト削減効果が期待できます。
まず、倉庫のレイアウトを最適化すると、効率的にピッキング作業ができるようになり、作業時間の短縮につながります。
荷物や商品の出し入れがスムーズになれば、1回の出荷当たりの作業時間が減るので、その分、人件費の削減につながります。
また、倉庫のレイアウトの最適化によって過剰在庫の解消にも効果が期待できます。
荷物や商品の配置を最適化することで在庫の可視化が容易になり、在庫水準を適正値に維持しやすくなるため、結果として在庫管理に関わるコストを大幅に削減することができます。
倉庫のレイアウトで押さえておきたいポイント
倉庫のレイアウトは、倉庫運営の効率や安全性に大きく影響します。
倉庫のレイアウトを設計する際には、必要なポイントを押さえることで、効率的で安全な倉庫レイアウトを実現することができます。
作業導線の最適化
倉庫のレイアウトにおいて、作業動線を最適化することは非常に重要です。
効率的な作業動線を確保することで、生産性の向上や作業の負荷軽減が期待できます。
作業導線を最適化するためには、まず入荷から出荷までの流れを正確に把握して、無駄のない動線を設計することが肝心です。
受け入れ、保管、ピッキング、梱包、出荷といった一連の作業工程において、作業者の動きが重複したり交錯したりしないよう、各エリアを適切に配置する必要があります。
このとき、一筆書きのように連続した動線を設計することで、作業者が無駄なく移動できるようにすることも大きなポイントになります。
商品の保管方法
倉庫のレイアウトを設計する際、商品の保管方法に関しても十分に考慮する必要があります。
適切な商品保管方法を選択することで、在庫管理の効率化や作業の生産性向上が期待できます。
商品の保管方法で押さえておきたいポイントとしては、まず、商品の特性に応じた保管方法を選ぶことが重要です。
商品の出し入れがスムーズに行えるよう、商品の形状や重さ、取り出し頻度などを考慮し、最適な保管方法を選択する必要があります。
一般的に大型で重量のある商品は、棚の上段に置くよりも、フォークリフトで直接運搬できる地面置きが効率的です。
一方で、小型軽量商品は棚に整然と並べて保管するのが適切と言えます。
加えて、商品の回転率に応じた配置も重要なポイントです。
よく出荷される商品は入口近くに置き、需要の少ない商品は奥の棚に保管するといった具合に、商品の回転率に合わせて保管場所を最適化します。
あわせて、ピッキング作業の効率化を図るために、商品の出し入れが集中するエリアを「ピッキングエリア」として設けることで、作業効率と保管効率のバランスを取ることができ、ピッキング作業の効率が大幅に向上します。
さらに、類似商品は近接して保管することで、在庫管理の可視化や商品の検索性が高まります。
商品ラインナップをグルーピングして配置すれば、作業者がスムーズに商品を探し出せるようになります。
安全性の確保
他にも、倉庫のレイアウト設計においては、作業者の安全性を最優先する必要があります。
作業動線の適切な設計はもちろんですが、棚の設置位置や通路幅の確保など、安全面での配慮も重要です。
倉庫は荷物の落下やフォークリフトの衝突など様々な危険を伴いますので、棚の高さを作業者の手の届く範囲に抑えたり、フォークリフトの通行を考えて通路幅を十分に確保したりすることで、商品の落下事故や衝突事故のリスクを最小限に抑えられます。
さらに、非常口の位置を明確にし、迅速な避難が可能な動線を確保することで、火災や地震などの緊急時の安全性も高められます。
拡張性を考慮する
倉庫のレイアウトを設計する際に、拡張性も視野に入れておくことも比較的重要なポイントになります。
レイアウトの変更は手間がかかり、一時的に作業もストップすることもあるため、倉庫のレイアウトを設計する際は、繁忙期の在庫増加や事業拡大に備えた拡張性を考慮する必要があります。
特に、ピーク時の在庫量が通常時の2倍以上になるような業界では、その変動に対応できるスペースを確保しておくことが重要です。
例えば、棚の高さや通路の幅はあらかじめ余裕を持って設定しておくことで、必要に応じて棚の増設が容易になります。
また、一時的な在庫の置き場所として、フリースペースも確保しておくと臨機応変な対応も可能です。
さらに、事業拡大に伴って倉庫全体の面積を増やす必要がある場合に備え、敷地内の余剰スペースを確保しておくと、長期的にみて無駄な費用をかけずに、効率的な倉庫運用が可能になります。
倉庫のレイアウト例
倉庫のレイアウトには、大きく分けて I型、U型、島型のほか、立体倉庫といった形状パターンがあります。
I型(直線型)レイアウト
I型(直線型)レイアウトの特徴は、入口と出口が同じ方向に位置する直線的な配置で、最もシンプルなレイアウトといえます。
商品の搬入から出荷までの流れが非常にシンプルで、作業動線が直線的になるため、作業の効率性が高いのが特徴です。
頻繁に出荷される商品を入口付近に、そうでない商品を奥の方に配置することで、ピッキング作業の動線を最短化できます。
一方で、I型(直線型)レイアウトは入口と出口が同じ方向のため、間口(横幅)を広げすぎるとスペース効率を活かしにくくなることから、倉庫内部の奥行きが深くなる傾向にあります。
このため、I型(直線型)レイアウトは、作業の効率性が重視されるような、出荷頻度の高く商品数が少ない倉庫に適しています。
U字型レイアウト
U字型レイアウトの特徴は、入口と出口が同一エリア内に位置していて、商品の搬入から出荷までの流れがU字型になる倉庫レイアウトのことです。
出荷頻度の高く商品数が多い倉庫に適したレイアウトで、入口と出口が近接していることから、作業導線が効率的で必要な商品を素早くピックアップできます。
U字型レイアウトの効率的な活用例としては、ピッキングエリアを両側に配置することで、作業者の往来がスムーズになるほか、商品保管エリアを最奥に設置して頻繁に出荷される商品を手元に置くことで、ピッキング作業の生産性を高めることも可能です。
島型レイアウト
島型レイアウトは、倉庫のレイアウトパターンの中でも比較的特徴的な形式の1つです。
作業エリアが島状に配置されていて、複数の島状に商品を配置するレイアウトです。
島型レイアウトのメリットは、作業の効率化と在庫管理の容易さにあります。
中央の通路を挟んで作業エリアが配置されるため、作業者は両側の商品を効率的に取り扱うことができます。
また、棚が島状に配置されることで、在庫の見渡しも容易になるほか、入口と出口が分離されているため、商品の流れが明確になり、作業の効率化が図れます。
島型レイアウトは、カテゴリーごとに分類して配置することでピッキング作業を効率化できるため、商品種類が多い倉庫に適しています。
立体倉庫
立体倉庫は、従来の水平方向の倉庫レイアウトとは異なり、高層のラックを使用して商品を立体的に保管するタイプの倉庫です。
限られたスペースで多くの商品を効率的に保管できるのが特徴です。
立体倉庫の構造は、一般的には複数階層の棚式ラックで構成されていて、フォークリフトなどの運搬機械を使用して、商品の保管や搬出を行います。
倉庫レイアウトの効率化につながる棚の種類
パレットラック
パレットラックは、パレットに積載した商品を複数段に積み上げて保管できる構造の棚のことで、倉庫の効率的な商品保管に欠かせない重要な設備の1つです。
パレットに積載した商品を複数段に積み上げて保管できるため、限られたスペースを有効活用できます。
特に、大型で重量のある商品を扱う際に威力を発揮します。
フォークリフトなどの機械を使ってパレットごと移動や保管ができるため、人手による商品の搬出入が不要になり、作業の効率化と作業者の安全性向上が期待できます。
中二階倉庫
中二階倉庫は、一般的な単層の倉庫に加えて、倉庫内に中間階を設置した倉庫のことです。
倉庫内に中二階を設置する場合、通常は倉庫で空いている棚の上部スペースを活用するので、倉庫内のスペース効率を大幅に向上させることができるほか、上階と下階を行き来させることで作業者の動線も短縮できるため、作業の生産性の向上にもつながります。
コラム 倉庫に中二階を設置するメリットとは?デメリットについても詳しく解説
自動倉庫
自動倉庫は、倉庫内の商品の保管と搬出入を自動化したシステムです。
ラック式の棚に商品を収納し、コンピューターと連動した搬送機械により、商品の保管や出荷を自動的に行うことができます。
この自動化により、人の手作業によるミスや待ち時間の削減が可能になります。
また、ラックの高密度配置により、限られたスペースの有効活用も図れます。
在庫管理も自動化されるため、在庫の可視化や正確な在庫情報の管理が容易になります。
コラム 自動倉庫システムの棚とは?種類や導入のメリット・デメリットを解説
移動棚
移動棚は、通常の固定式の棚とは異なり、棚そのものが移動可能な設備です。
電動や手動で棚を左右に移動させることで、任意の場所に通路を作り出すことができます。
通路を必要最小限に抑えることで、棚の設置面積を増やすことが可能です。
また、商品の出し入れ時に必要な通路を瞬時に確保できるため、ピッキング作業の効率化にも寄与します。
キャスターラック
キャスターラックは、棚の支柱の下にキャスター(車輪)を取り付けることで、棚ごと移動ができるようにした設備です。
機械を使わずに、人力で棚を簡単に移動させることができるので、レイアウトの変更が容易にできるのが特徴です。
ピーク時の在庫増加や商品の入れ替えに合わせて、棚の位置を素早く変更することが可能です。
また、清掃や点検の際にも、棚を簡単に移動させることができます。
まとめ
倉庫のレイアウトは、物流業務の効率性を大きく左右する重要な要素です。
適切なレイアウトを設計することで、作業動線の最適化、在庫管理の容易化、スペースの有効活用などが実現できます。
一方で、倉庫レイアウトの設計には専門知識が必要になりますので、倉庫のレイアウト設計を検討する場合は、事前に専門業者に相談することをおすすめします。
ミクニヤでは、倉庫レイアウトや棚の設置に関するご相談を承っております。
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