スチールラックの地震対策が必要な理由
日本は世界の中でも地震発生数の多い国のひとつで、年間約2,000回の地震が発生しています。
これらの地震の大部分は小さなもので体感できる揺れはほとんどありませんが、時々大きな地震が発生して甚大な被害をもたらすことがあります。
日本国内の地震発生状況
2023年の1年間に日本国内で発生した地震の回数は、震度1以上の地震が241回でした。
そのうちの大きな地震の回数は、震度6 強が1回、震度5強が1回、震度4が6回となっています。
最近の大きな地震では、令和6年1月1日に発生した能登半島地震が記憶に新しいと思います。
石川県の能登半島を中心に大規模な地震が発生し、特に輪島市と珠洲市では震度7を観測しました。
この地震では津波により甚大な被害が発生するとともに、家屋や建物の倒壊、土砂災害、火災が発生しました。
気象庁 令和6年能登半島地震の地震活動と防災事項ポータルサイト
地震で起こり得る「3つの危険」から身を守る
東京都耐震ポータルサイトでは、近年発生した大地震による負傷原因のうち、30~50%が家具類の転倒・落下が原因という結果を公表しています。
出典:東京都耐震ポータルサイト なぜ耐震化? 4. 家具類の転倒防止対策も
また、東京消防庁では地震により家具類の転倒・落下・移動が発生すると、つぎの3つの危険が生じる可能性があるため、日ごろの家具類の転倒・落下・移動防止対策が非常に大切であるということを報じています。
けが
近年発生した地震でけがをした原因を調べると、約30~50%の人が、家具類の転倒・落下・移動によるものでした。
火災
転倒・落下した家具などが電気ストーブなどの電源スイッチを押し、付近の燃えやすいものに着火するなどして火災が発生することがあります。
避難障害
避難通路、出入口周辺に転倒、移動しやすい家具類を置くと、避難経路を塞いだり、引き出しが飛び出すことで、つまずいてケガをしたり、避難の妨げになることがあります。
このようなことから、スチールラックを設置する際もしっかりと地震対策を行う必要があります。
スチールラックは背が高いうえに重量があるため、地震の揺れによって簡単に倒れてしまいます。
倒れたスチールラックの下敷きになったり、落下してきた荷物によってケガをする可能性がありますので、スチールラックを設置するときは、転倒防止対策や落下防止対策などの地震対策を同時に行っておくとより安心です。
スチールラックの地震対策【収納物の落下防止対策】
スチールラックの地震対策には、大きく分けて収納物の落下防止対策とラック本体の転倒対策の2つがあります。
まずは、スチールラックの収納物の落下防止対策をご紹介します。
落下防止ベルト
落下防止ベルトは、地震や揺れによってスチールラックから保管物が落下することを防ぐためのオプションパーツです。
落下防止ベルトの素材にはメーカーによっていくつかの種類がありますが、ミクニヤではゴム素材のベルトが販売されています。
落下防止ゴムベルトは、伸縮性があり収納品の取り出しが楽にできるほか、先端がフック式のため取り付けや取り外しも簡単に行うことができます。
落下防止バー
落下防止バーは、落下防止ベルトと同じく地震や揺れによってスチールラックから保管物が落下することを防ぐためのオプションパーツです。
金属製のバーをスチールラックの支柱に取り付ける構造になっているため、大きな揺れでも変形しにくく、重量のある保管物でも揺れによる落下を防ぐことができます。
落下防止パネル
落下防止パネルも、地震や揺れによってスチールラックから保管物が落下することを防ぐためのオプションパーツです。
落下防止パネルは保管物を支える面積が広く、メッシュ状で通気性も良いことから、形状が不安定な保管物や、湿気を避けたい食品や衣類などを保管する際の落下防止対策にも適しています。
スチールラックの地震対策【ラック本体の転倒防止対策】
スチールラックのもうひとつの地震対策は、ラック本体に転倒防止対策を施すことです。
ラック本体を固定することで、スチールラックの倒壊リスクを最小限にすることができます。
また、スチールラックの落下防止対策と合わせて転倒防止対策を行うことで、大きな地震や揺れが発生しても、落下や倒壊によるケガや事故のほか避難通路を妨げるリスク抑えることができます。
スチールラック本体の転倒防止対策では、おもに次の5つの方法があります。
固定金具
スチールラックの転倒防止対策で最もシンプルなものは、金具によってラックを建物の一部と固定する方法です。
建物とスチールラックをボルトと金具を使って固定することでスチールラックの転倒リスクを大幅に減らすことができますが、一方で建物部分にボルトで穴あけをする必要があるため、建物の構造や賃貸契約の内容によっては、固定金具が使えない場合もあります。
床固定用 転倒防止部材
スチールラック本体の転倒防止対策で最もシンプルな方法は、床固定用 転倒防止部材を使って支柱と床を固定する方法です。
床固定用 転倒防止部材は支柱の足元に取り付けたうえで、アンカーボルトで支柱と床を固定します。
床面と支柱がボルトでしっかり固定できるので、大きな地震や揺れによる転倒リスクが大幅に低減されます。
一方で、床固定用の転倒防止部材を使用できる場所は、主にコンクリートなどの硬い床面でアンカーボルトを使用できる場所に限られます。
また、近年のオフィスで増えているOAフロアで使用する場合は、床下に空間があるためコンクリートの底床に打ち付けられる長さのアンカーボルトを使用する必要があります。
施工事例
中量棚(金網付)を現地組立させていただきました@東京都新宿区
中量ラック(側面パネル付)を現地組立させていただきました@板橋区-休日
壁面固定用 転倒防止部材
固定金具は床固定用以外に、壁面固定用の転倒防止部材があります。
L型の転倒防止部材の一辺をスチールラック本体に固定し、もう一辺を壁面にボルトなどを使って固定します。
壁面固定用転倒防止部材は、床固定用の転倒防止部材と併用して取り付けることでスチールラックの転倒リスクをさらに下げることができます。
※壁面転倒防止部材の選び方
壁面素材と転倒防止部材の組み合わせ例(L型固定金具を使用する場合)
壁面素材 | 固定するねじ類 |
コンクリート | アンカーボルト |
石膏ボード | トメラー、トグラーなど(石膏ボード用アンカー) |
木材 | 木ねじ |
壁面固定用転倒防止部材(L型固定金具)を使ってスチールラックと壁面を固定する場合は、固定する壁面の素材によって、使用するねじ類が変わります。
誤った組み合わせを使用すると、転倒防止の効果がなくなってしまう可能性もあるため設置や取り付け方法に不安がある場合はミクニヤに相談ください。
施工事例
軽中量ボルトレス棚を現地組立させていただきました[壁面固定工事付]@埼玉県上尾市
【別注仕様】軽中量ボルト式ラックを現地組立させていただきました@島根県松江市
転倒防止ベース
転倒防止ベースは、穴あけができない床面などでスチールラックが前面に倒れない様にする為の転倒防止用オプションパーツです。
支柱の脚の先端部分に転倒防止ベースを取り付けることで、床との接地面積が増えてスチールラックが前面に倒れにくくなります。
転倒防止ベルト
転倒防止ベルトは、スチールラックの最上部の棚板と壁面をゴムベルトの両端に取り付けられた接着パッドで張り付けて固定する転倒防止部材です。
転倒防止ベルトは、接着固定のためスチールラックや壁面への穴あけ工事が不要です。
転倒防止ベースとあわせて使用すると、より転倒リスクを下げることができます。
転倒防止突っ張り棒
転倒防止突っ張り棒は、スチールラックの最上部の棚板と天井の間に突っ張るように固定する伸縮タイプの転倒防止部材です。
接着や穴あけ加工の必要が無いため、比較的簡単に取り付けることが可能です。
ミクニヤの転倒防止突っ張り棒は、2本の突っ張り棒が一体になったH型構造でジャッキ方式による固定式となっています。
天継ぎ
天継ぎとは、向かい合わせに設置したスチールラック同士を、ラック間天継材でつなげて固定する転倒防止対策です。
ラック間天継材をつけることで2台のスチールラックが一体構造になり、転倒しにくい安定した構造になります。
ミクニヤでは天継ぎ用の専用パーツとして、転倒防止用のラック間天継材を取り扱っています。
施工事例
中量棚、中軽量棚を現地組立させていただきました【天継工事】@愛媛県松山市
地震対策に向いているスチールラックは?
スチールラックの地震対策は転倒防止部材や落下防止部材を使うのが一般的ですが、スチールラックの種類によって、揺れに耐性があるものとそうでないものがあります。
ボルト式ラックの場合は、接合部分をボルトで固定しているため、あそびが少ない分揺れが少なく保管物も落下しにくいものの、一定以上揺れが大きくなると倒れやすい構造になっています。
一方、ボルトレスラックの場合は、はめ込み式で接合部分が固定されていないことから、ボルト式ラックよりもラック本体が揺れやすい構造になっています。
揺れやすいことで保管物が落下するリスクはあるものの、逆に揺れる事で地震の力を吸収する効果があるため、ボルト式ラックよりも倒れにくいという特徴があります。
スチールラックにはそれぞれ特徴がありますので、保管する物や設置場所など、条件にあった種類を選ぶことをおすすめしますが、可能な限り転倒防止対策や落下防止対策などの地震対策を行っておいた方がより安心と言えます。
スチールラックの地震対策【その他の対策】
スチールラックを設置するときは、転倒防止対策や落下防止対策以外に次の地震対策を行っておくと、さまざまな被害からリスクを最小限に抑えることができます。
スチールラックの定期的な点検
転倒防止対策や落下防止対策とあわせて、定期的にスチールラックを点検しておくとより安心です。
スチールラックは主に次のような点検方法があります。
ラック本体の点検
- 傷や歪みがないか確認する
- ネジやボルトが緩んでいないか確認する
- 脚やキャスターが破損していないか確認する
棚板の点検
- 傷や歪みがないか確認する
- 棚板の固定がしっかりしているか確認する
固定金具の点検
- 緩んでいないか確認する
- 破損していないか確認する
地震発生時の避難経路の確保
また、スチールラックを設置するときに地震発生時の避難経路をあらかじめ確保しておくことも重要です。
まず大前提として、地震発生時にスムーズに避難できるよう、避難経路にスチールラックを絶対に設置しないようにします。
また、避難経路に設置していない場合でも、避難経路に近い場所に設置した場合、地震や揺れで、転倒や保管物の落下により避難経路が塞がってしまう可能性もあります。
ですので、緊急時でもスムーズに避難できるように、スチールラックを設置する際は実際の避難を想定したうえで、十分な導線を確保できる場所に設置しましょう。
地震保険への加入
地震が発生してスチールラックなどの家財類が破損した場合、地震保険に加入していると補償が受けられる可能性があります。
ただ、地震保険は保険会社や保険の種類によって保障が異なりますので、地震保険への加入を検討する際は、補償内容や保険料のほか免責金額の設定など、内容を理解した上で加入することをおすすめします。
まとめ
スチールラックは大きな地震や揺れが発生すると、転倒や収納物が落下する危険があります。
地震の被害によりケガの発生や避難通路の妨げになるため、スチールラックを設置するときは、転倒防止対策や落下防止対策などの地震対策を同時に行っておくとより安心です。
一方で、地震対策は設置場所の条件や保管物によって方法が異なります。
誤った組み合わせを使用すると、地震対策の効果が得られない可能性もありますので、設置や取り付け方法が分からない場合はミクニヤにご相談ください。